書評

【嫌われる勇気】アドラーの名言まとめと本の内容要約および感想

アドラーの教え嫌われる勇気とは?

自分の本心をさらけ出すことができない。

まわりにどう思われているかが気になってしまう。

こんな窮屈な思いを抱いて生きている方は多いと思います。

「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と断言するアドラーは、対人関係の悩みから解放されるための、たった1つのシンプルな方法を教えてくれます。

『嫌われる勇気』はアドラー心理学の入門書であり、本書は自己啓発書の源流として大ベストセラーとなりました。青年と哲人の対話形式で、アドラーの唱える”人が幸せに生きる方法”を噛み砕いて説明しています。

今回はこの本の内容要約および感想を書きたいと思います。

嫌われる勇気の内容要約1 トラウマは存在しない

トラウマは存在しない

人の現在は過去の経験によって影響を受けるという原因論に対し、アドラーは人は過去によって支配されないという目的論を唱えています。物事にはまず先に目的がある、という考え方です。

例えば、引きこもりの人は不安が原因で引きこもりになるわけではありません。親の注目を集めたいなど、引きこもる目的が最初にあり、そのために不安という感情をつくりだしている、というのです。

人は変わることができる

アドラーは人の性格や気質のことをライフスタイルと読んでいますが、人はライフスタイルまでも自分で選びとっていると言います。

例えば、自分のことを不幸だと思っている人は、無意識のうちに不幸という人生を自らの手で選びとっており、そして、このまま変わらないでおこうと決心しているのです。なぜなら、変わった自分に対する不安が大きく、今のままでいる方が安心だからです。

あなたの人生は「いま、ここ」で決まる。

これまでの人生になにがあったとしても、過去に縛られ続ける限り、あなたは一歩も前には進めません。幸せに生きるためには、アドラーのいう通り、「いま、ここ」に生きるあなたがしっかり未来を見据えて、今のライフスタイルを変えていく決心をする必要があります。

嫌われる勇気の内容要約2 全ての悩みは対人関係

人間の全ての悩みは対人関係である

続いて話は対人関係に移ります。

アドラー心理学では、この世に内面的な悩みは存在せず、全ての悩みは対人関係にある、としてます。孤独を感じるのにも他者を必要とするように、人間は社会的な文脈においてのみ個人となるからです。

自分のことが嫌いだという人も、結局は対人関係で傷つくことを恐れ、それを避けるために自らの短所に着目しているというのです。

劣等感は主観的な思い込み

次に、対人関係を劣等感という切り口で考えています。

人間には本来、向上したいという優越性の追求がありますが、それが達成されないときに劣等感が発生します。劣等感は客観的事実ではなく、主観的な解釈に過ぎません。劣等感自体は人間の成長を促すきっかけにもなるので、悪いものではありません。

しかし一歩に踏み出すことが怖い、または努力したくないがために、「どうせ自分なんて」と諦めてしまい、劣等感を言い訳に使い始めてしまった場合。これを劣等コンプレックスといい、人は向上できなくなってしまいます。

また、劣等コンプレックスでも我慢できない場合、「できない自分」を受け入れるために、あたかも自分が優れているかのように虚勢を張る。これを優越コンプレックスといいます。

それはしばしば不幸自慢という複雑な形で現れます。不幸であることをアピールすることで、周囲の同情を買い、相手を支配しようとするのです。引きこもりなどはまさにその典型例と言えます。

人生は他者との競争ではない。

優越性の追求や劣等感は、しばしば他者との比較のなかで言及されることが多いですが、全ての人は対等であり、そこに優劣はありません。優越性の追求や劣等感は、本来「理想の自分」との比較から生まれるものであり、今の自分より前に進もうとすることにこそ価値があります。

対人関係のなかに競争があると、他者全般のことを敵だと見なすようになり、人は対人関係の悩みから逃れることができません。

もし誰かがあなたを罵倒したとしたら、相手はあなたに「権力争い」を挑んでいます。勝つことによって、自らの力を証明したいのです。しかし負けた相手は別の形で復讐を画策し始め、ここまでいくと当事者間での解決は不可能になります。よって権力争いには絶対乗ってはいけません。

他者は敵ではなく自分の仲間だと考えれば世界はよい良いものになります。

人間の目標と人生のタスク

アドラー心理学では、人間の行動面と心理面のあり方について、はっきりとした目標を掲げています。

心理面の目標
  • 私には能力がある、という意識
  • 人々はわたしの仲間である、という意識
行動面の目標
  • 自立すること
  • 社会と調和して暮らせること

これらの目標は人生のタスク(人生で直面せざるをえない対人関係)と向き合うことで達成できます。

人生のタスク
  • 仕事のタスク(仕事上の人間関係)
  • 交友のタスク(友人関係)
  • 愛のタスク(恋愛関係や親子関係)

仕事のタスクは仕事という共通の目標があるので容易ですが、交友のタスク、愛のタスクはより難しくなります。

他者を敵だとみなし仲間だと思えないのは、人生のタスクから逃げていることを指し、アドラー心理学では「人生の嘘」と言われます。

アドラーの心理学は、勇気を出して人生のタスク(対人関係)に取り組むよう教えています。アドラーの心理学は他者を変えるための心理学ではなく、自分が変わるための心理学なのです。

嫌われる勇気の内容要約3  他者の課題を切り捨てる

承認欲求を否定する

アドラー心理学では、承認欲求が人間の根源的な欲望として存在することは認めつつも、他者からの承認を求めることを否定します。われわれは他者からの期待を満たすために生きているのではないのです。

自由とは他者から嫌われること

承認欲求に従いながら心身を摩耗して生きるのは自由とは言えません。

他者からの評価を気にかけず、他者から嫌われることを恐れず、承認されないかもしれないというコストを支払わない限り、自分の生き方を貫くことはできない。

自由とはすなわち他者から嫌われることです。嫌われることを恐れず前に進むことが本当の自由なのです。

しかし独善的になるのでも、開き直るわけでもなくして、良い意味で自分本位に振る舞うためにはどうすればいいのか?

課題の分離 

アドラー心理学の基本スタンスとして課題の分離という考えがあります。あらゆる対人関係のトラブルは、他者の課題と自分の課題の混同で起きます。

まず、他者の課題を切り捨てる事。あなたにできることは、見返りや期待にしばられず、「自分の信じる最善の道を選ぶこと」です。それについて他者がどう評価を下すかは他者の課題なのです。例えば、進路について親はアドバイスをすることはできますが、最終的に決定しその結末に責任を負うのは他ならぬ、あなた自身なのです。

一方、他者を自分の課題に介入させてもいけません。例えば、嫌な上司がいるせいで仕事の成果が出ないというのは、仕事の成果が出ない言い訳として嫌な上司という存在を作り出しているのです。しかし、上司のあなたへの接し方は上司の課題であり、あなたの課題は仕事で成果を挙げることです。

以上のようにアドラー心理学では、承認欲求に縛られずいきていくためのメソッドとして課題の分離を挙げました。

この課題の分離こそが対人関係のスタートなのです。

対人関係において他人を変えることはできないが、自分を変えることはできる。それによって他人も変わっていくのです。

嫌われる勇気の内容要約4 世界の中心はどこにあるか

対人関係のゴールは「共同体感覚」

他者を仲間だとみなし、そこに「自分の居場所がある」と感じられることを、共同体感覚といい、アドラー心理学では鍵となる概念になります。

課題の分離ができておらず、「他者からどうみられているか」という承認欲求があるうちは、自分が世界の中心だと思いがちです。しかし、そうした自己中心的な考えを捨て、他者への関心をもつことで、自分が共同体の一部であるという所属感が得られるのです。

そのためには「わたしはこの人に何を与えられるか」を考え、人生のタスクに立ち向かう必要があります。

では課題の分離が、どう他者との良好な関係ひいては共同体的関係に繋がるのでしょうか?

「縦の関係」を否定し、すべてを「横の関係」とする

そこで登場するのが横の関係という概念です。

横の関係とは、人は同じではないけど、意識の上では対等であるということです。そのため他者をほめてもいけないし、叱ってもいけません。縦の関係で相手を低くみているからこそ、他者の課題に介入してしまうのです。

劣等感または劣等コンプレックスは縦の関係から生まれてくる意識です。よって横の関係を保つことで対人関係のトラブルは少なくなるといえます。

横の関係においては、他者を評価せずに感謝します。アドラー心理学ではこれを「勇気づけ」といいます。感謝されることで人は自分には価値があると思えるのです。

その際に、他者が「何をしたか」ばかりに注目してはいけません。人はただ「存在している」だけで価値があるのです。

嫌われる勇気の内容要約5 いまここを真剣に生きる

共同体感覚を得るための方法

対人関係のゴールである共同体感覚を得る事で人は幸せになることができると述べましたが、どうすれば共同体感覚を養えるのでしょうか。

共同体感覚を得るための方法として以下の3つがあります。

共同体感覚を得る方法
  • 自己受容…交換不能なありのままの自分を受け入れること
  • 他者信頼…無条件で他者に信頼を置くこと
  • 他者貢献…自分が他者になにをできるか考え、実践する

自己受容により、自分にできること(=自分の課題)と自分にできないこと(=他者の課題)を分離し、ありのままの自分を受け入れることができます。

他者を信頼する際、「裏切られたらどうしよう」という疑念がわいてきますが、他者が自分を裏切るかどうかは他者の課題であり、あなたはただ他者を信じること(=自分の課題)に集中すればいいのです。

自己受容と他者信頼により、他者を仲間だと認め、所属感を得ることができます。そうすることで自然と他者に貢献することができます。それはまた「自分は他者の役に立っている」という自己受容にも繋がっていくのです。

幸福とは貢献感

自分が誰かの役にたっていると思えたとき、人は自らの価値を実感することができます。

結論になりますが、アドラー心理学における“人が幸せになる方法”とは、貢献感をもつことです。

承認欲求を満たす必要も、自分の優越性を誇示することも必要なく、共同体的感覚を持って他者に貢献できているという実感さえあれば人は幸せになることができます。

無理に特別であろうとせず、ありのままの自分を受け入れ普通でいることの勇気が大切です。

いまここを真剣に生きる

特別であろうとする人は、高邁な目標を立て、山頂を目指して登るかのように線の上を生きています。しかし、実際の人生は点の連続であり、人は「いま、ここ」を真剣に生きることしかできません。

計画的な未来、ましてや過去に影響を受ける人生など不可能なのです。

あなたのライフスタイルは「いま、ここで」あなたが決めることができます。人生を意味あるものにすることができるのは、過去や未来、そして他の誰でもなく、いまのあなた自身なのです。

「他者に貢献する」という導きの星さえ見失わなければ、過去や未来、承認欲求、他者に嫌われるという恐怖感に惑わされることなく、自由に生きることができます。

嫌われる勇気を読んだ感想

『嫌われる勇気』というタイトルを見て、「他者を気にせずに自由に生きなさい」という安直なメッセージかと思った方は多くいらっしゃるかと思います。

(私も最初は著名人の書いたインチキ臭いビジネス本かと思いました…)

本書は、アドラー心理学研究の第一人者である岸見氏との対話をもとに、売れっ子ライター古賀氏が書いた正統派の自己啓発本です。

対話形式なので、読者の持つ疑問が青年によって代弁されているので凄くわかりやすく、心理学や倫理学にあまり馴染みのない方でもすんなり理解することができます。

Twitter、Facebook、Instagram、YouTube。今の世の中は自己承認欲求で溢れてます。現代人は他人の評価しか気にしていないと言ってもいいでしょう。炎上や拡散を恐れてやたらなことは何もできません。

ネットだけでなく、日常生活でも同じです。同僚との横の関係においても、どうみられているかばかり気にして、主張すべきことも主張できません。

現代社会は日常でもネット上でも、いいね!の数を元にした他者と比較・競争で成り立っています。

大学時代、私は疲弊していました。クラスやサークルでの自分の立ち位置、SNSでの評判、彼女の有無、就職先… 常に他者の視線を気にしなければならず、かつ他者と比較しなければなりませんでした。

しかしこの本に出会って、とてつもない安堵感を得たのを覚えてます。

自己の課題と他者の課題を分離し、私はいま目の前の課題(=自分が正しいと思うこと)をやり、それをどう判断するかは他者の勝手である。

「嫌われる勇気」を持つと、頭がとてもスッキリし、何をするにも自然と意欲や勇気が湧いてきます。自分のすべきことが明快にわかるようになるのです。

是非あなたもこの本を読んで人生を変えてみませんか?