書評

カーネギーの語る人を動かす三原則のまとめ(内容要約および感想)

人を動かす
ゆう
ゆう
対人対応力について書かれた有名な本『人を動かす』(D・カーネギー)をご紹介します。

『人を動かす』は1936年に刊行された自己啓発の元祖とも言われる本で、世界中でベストセラーとなりました。80年以上経った今でも変わらず通用する対人術を例を交えながらわかりやすく解説しております。

様々な企業のマネジメント研修等で使われており、私も会社に入って最初の部署の先輩に、「ビジネス書はこれだけ読めばいい」と言われてこの本を手に取りました。

大抵の仕事は、特別な技能や知識ではなく対人関係で決まっていくものです。営業など顧客を相手にする仕事はもちろん、人事や経理など組織内の人間を相手にする仕事も人との関わり方が大切です。エンジニアのような技術者でも1人で全ての仕事を完結することはできませんよね。

上司・部下・顧客等、様々な人たちとどう付き合い、どうコントロールしていくかがビジネスで一番大切なことだと私は毎日の辛い会社生活の中で実感しております。

この記事では、カーネギーの様々な論説の中でも要となる『人を動かす三原則』をご紹介いたします。

原則① 決して相手を非難しない

相手を非難する代わりに、相手の理解に努めるべきだということです。

例えば、上司が部下のミスに対してこっぴどく叱りつけたとします。

不満が爆発したのかもしれませんし、愛のムチのつもりで言ったのかもしれません。しかしそれで紳士に反省するような真面目な人はそう多くはいません。

怒られた部下は自尊心を傷つけられたために、防衛本能として心の中で自分を正当化しようとします。「最近忙しかったから仕方ない。」「上司の指示が悪い。」などなど一瞬のうちに色々言い訳を考えてしまうのです。

その後は「怒られないように」というマイナスの感情でしか部下は動かなくなり、その部下の最高のパフォーマンスを引き出すことは期待できません。最悪の場合叱った上司に対して反抗心を起こし、今後どんどん言うことを聞いてくれなくなるかもしれません。

つまり、他人を非難するというのは自分の憂さ晴らしでしかなく、極めて利己的な行為です。非難することで状況が良くなったり、本人が良い方向へ変わったりすることは決してありません。

相手を非難したくなったとしてもグッと堪え、相手がなぜそういう行動に至ったかをよく考え最大限理解することで、相手への寛容さやひいては好意が生まれてます。そして短所ばかり責めるのではなく、長所を褒めることで相手の自尊心が満たされ、その人の自発性を引き出しより良い行動へと繋がります。

ミスをした部下と接する時は、なぜできなかったのかを一緒に考えてあげて、「何が悪かったのか?」「どうすれば改善できるようになるか?」を本人に腹落ちさせることが大切です。そして「ここは良かったよ」「ここだけ直せば完璧だ」などとポジティブな表現で諭してあげるだけで、今後その部下は怒った場合よりも何倍ものパフォーマンスを発揮できることでしょう。

原則② 相手の承認欲求を満たす

どんな人にでも自己承認欲求があり、自己の肯定感が人が行動を起こす原動力につながります。

マズローやフロイトといった著名な心理学者達は、人間の根源的な欲求の1つとしてこの自己承認欲求を挙げています。

人は大抵の時間自分のことを考えて過ごしており、自分なりの自己評価を内面に抱えています。人は自分の自己評価通りに褒められることで承認欲求が満たされ、よりモチベーションをあげて行動できます。そして褒めてくれた人に対して好意を抱くようになり、その後の行動を促すことも容易になるのです。

大抵の人間は「褒めて伸びるタイプ」です。

「怒って伸びるタイプ」はほんの一部。よほど成長意欲をもって真剣に物事に取り組んでいる人たちです。一流の音楽家を目指して楽器の練習に取り組む音大生、もしくは一流の俳優を目指して日々稽古に励む舞台俳優などでしょうか。怒られても全く苦ではなく、有難いご指導賜ったと本気で思える人たちです。

一般的な職場で、本気で仕事で成長したいと思って目をギラつかせている人はほとんどいないと思います。

ビジネスのマネジメントなどにおいては、褒めることこそが最大の鍵です。「xxxさんだからできる」「さすが〇〇さん」と相手の長所を見つけ、褒めることが人を動かし、成長させる上で大切なことです。

原則③ 相手の立場に立つ

常に相手の立場で物事を考え、相手に強い欲求を起こさせるということです。

人が行動を起こす原因はただ1つ、心の中の欲求です。

怒ったり命令したりして従わせても、それは所詮「怒られたくない」というマイナスの感情から起きた行動にすぎず、良いパフォーマンスは生み出せません。その人のもつポテンシャルを最大限引き出すには、行動したいというその人の内なる欲求を呼び起こさなければいけません。

例えば、私の親戚にはいつもご飯を残す子供がいました。いくら母親が食べなさいと怒っても「美味しくない」「嫌い」などの一点張りだったそうです。しかしある言葉をかけたことでその子は一切ご飯を残さなくなったそうです。

「ご飯全部食べないと仮面ライダーになれないよ」

その子は仮面ライダーが大好きでした。悪の怪人を倒すためにはご飯を食べて大きくならないといけない、と幼いながらに悟ったのでしょうか。自分の目標のためにご飯を自発的に食べるようになったのです。

「やりなさい。」と上から言うのではなく「やったらxxxとかこんな良いことがある」と言うことで、人の心の中に欲求を呼び起こし、自発的な行動を促すことが大切です。

人を説得する際にはまず自分に問いかけ、それで自分は行動を起こすか?と考えてみることが大切です。

人を動かす三原則まとめ

対人関係で大切なことは全てこの本が教えてくれました。すごく当たり前だけど、なかなか気づけないことです。

自分の生活を振り返ってみても、確かに自分のことを褒めててくれる人に嫌な気持ちは抱かないし、自発的に行動した時にこそ成果をあげてました。

ムチではなくアメを与える。北風ではなく太陽になる。

私はこれだけを意識して毎日人と接していこうと思っています。

本編には人を動かす三原則の他にも、以下の内容が含まれています。

本書に含まれる内容
  • 人を動かす三原則
  • 人に好かれる六原則
  • 人を説得する十二原則
  • 人を変える九原則
  • 幸福な家庭をつくる七原則

普段何も考えずに行っているコミュニケーションでも、人間の根源的な心理に基づいた接し方をするだけで、人は自分の思い通りに動いてくれるということがわかりました。仕事や家庭でのコミュニケーションに悩んでいる方は是非読んでほしい一冊です。